準備スタート

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店長である渕上と挨拶を終え、早速今日から働くことになった 体験ということで私は専属の美容師に髪をセットしてもらいに渕上に案内されて向かう その道すがら緊張する私をリラックスさせようとしているのか色んな話を振ってきた 「南田社長から聞いてるけど、この業界は初めてなんでしょう?」 「はい、そうですね」 「やっぱり緊張してる?」 「……多少は」 「だよね、でもいきなり何でも1人でしてって訳じゃないし、安心して」 「……はい」 南田とは私の従兄弟の名前だ 社長をやってるからか夜の店を接待として利用するらしく、渕上とも顔見知りらしい だから私をCLUB PEACHに紹介したようだ 「さ、着いたよ」 渕上の声に思考の海から意識を戻して、彼がとあるビルへ入っていく後を追った 階段を登った先の突き当たりに、サロン マドレーヌと書かれた扉がある どうやらここで髪をセットしてくれるらしい、渕上が扉を開けて入るように促すのに従って店の中へと足を踏み入れた 「こんにちは!」 「こんにちははるちゃん、急にお願いしてごめんね」 「いえいえ、大丈夫ですよー」 「この子はうち専属の美容師ではるちゃん」 「よろしくお願いします」 「はーい、よろしくお願いします!」 元気いっぱいに挨拶をしてくれたはるに、私はぺこりとお辞儀をする 彼女は笑顔で私を鏡の前に案内して、椅子へと座るよう促した 「この業界初めてなんですかー?」 「えぇ、はい」 「へぇ、凄いですね」 「……凄い、ですか」 悪気は無いのだろうはるの言葉に苦笑いするしかない そんな私の様子に気づかず彼女は慣れた手つきで髪を結い上げていく ピンやアイロンを使って髪型が出来上がっていくのを鏡越しに見ながら私は渕上と話をしていた 「そういえば、名前どうする?」 「名前ですか?」 「そ、源氏名……本名でもいいし好きなのにしていいよ」 「……それじゃ、まなでお願いします」 「まなちゃんね、了解」 まなという名前にした理由はない、ふと思いついただけ 今から私はまなという名前でこの夜の街を生きていく 渕上がまだ何か話していたがそれに気づかず、私は心の中でこれからのことを考えていた
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