悪しきもの

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 さやって人のことも、銀行強盗の子供も、あやめも、絶対にソウスケは見捨てない。初めは疑わしかったけど今は心から信頼している。  あなたは、紛れもなく神様だ。それも、優しい心を持った。  ソウスケの表情が少しだけ歪んだ。彼の額には汗が浮かんでいる。その顔を見てハッとする。私は以前も、こういった彼の顔を見ているのだ。  苦しげな声が彼の形いい唇から漏れた直後、ソウスケはガクッと前に倒れ込んだ。私は慌てて彼に手を伸ばそうとしたが、もうそれすらできる体力がなかった。辛そうな横顔を見つめているしかできない。 「そう、すけ」  乱れた息を整えるように、ソウスケははあはあと必死に酸素を求めた。だが少しして、私の方に顔を上げ、少しだけ口角を上げた。 「大丈夫だ。待ってろ、今沙希も」  微笑んだ彼の顔は汗だくで髪が張り付いていた。白い肌はなお真っ白になり、人形のようだと感じた。  ソウスケはそれでも気丈に振る舞い、なんとか起き上がって私に笑いかけてみせた。でも、そんな彼の手は震えているのに気づいていた。 「ソウスケ……」 「完治は無理だが、このままでは」 「私は、いい……」
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