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「沙希としばらく一緒に寝ていた時にもらった貯金があるんだ。私は平気だ」
そう言ったソウスケは優しく私の髪を撫でる。
「嘘、苦しそう」
「そりゃ楽なことじゃないからな。でも平気だ、待ってろ」
「ソウスケ」
「私は消えない」
断言したソウスケは、その手を滑らせて私の頬に当てた。冷たい体温がなお伝わる。
ぼんやりしてきた頭でその手だけをしっかり忘れないようにしようと思った。なぜかはわからないが、ソウスケのこの手が愛しくてたまらなかった。
そしてソウスケは、ゆっくり私に触れるだけのキスを落とした。陽の気が移らないか試したのかな、と思った。
柔らかで、それでいて安心する不思議な唇を感じた瞬間、私の意識が飛んでいく。
最後に見えたのは、目の前で優しく笑っているソウスケの顔だった。
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