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「……ますかー……」
遠くで聞こえる声に、自分の瞼が動く。
「大丈……すか……返……でき……」
ピクリと右手が反応したのに気付く。ぼんやりとした意識のまま、私が目を開ける。
飛び込んできた光景は、真っ白な服だった。それを見た瞬間、ソウスケだと思った自分は一気に意識が鮮明になる。
「あ! 目を覚ましました、わかりますかー」
ソウスケではなかった。白いそれは、白衣だった。男性の看護師が、こちらを覗き込んでいたのだ。
「……あ」
「わかりますか? お名前言えますか?」
「藍川……沙希」
問われるがまま答える。看護師は安心したように頷いた。近くに医師もいたらしく、何やら報告する声が聞こえる。
「ソウスケ、は?」
「はい?」
「ソウスケ……」
「お連れさんですか? まだ搬送されてない人たちもいますので……なんせ多くの人が巻き込まれたので」
私の腕に巻かれた血圧計を操作しながら看護師は答えた。周りをようやく見渡し、ここが病院内だと理解する。白い壁、独特の匂い、心電図モニターの音。私は腕に点滴が繋がれていた。
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