悪しきもの

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「両足に怪我を負ってますけどね、大丈夫ですよ。痛みますか?」 「あ、すこ、し」 「現場の出血量は結構多く見えたんですけど、傷自体はそう大きくありませんでしたよ」  ソウスケだ、と思った。あやめの時もだった、たくさん出血していたのに、その出血源は不思議と分からなかったと。  ソウスケは? ソウスケは今、どこにいるの?  あの時意識を無くしたあと、彼は私のことも助けてくれたんだろう。その本人はどうしたというのだ。ここにソウスケの姿は見当たらない。 「何が、あったんですか……」  私が尋ねると、持っていたメモに何かを書きながら看護師は答える。 「まだ詳しいことはわかってませんけどね、なんか爆発事故に巻き込まれたみたいですよ」 「爆発事故……?」 「原因はこれから解明されるでしょうね。ご家族に連絡します、電話番号言えますか?」  忙しそうに振る舞う看護師に、それ以上何も聞けなかった。私は自分の家族の連絡先を告げ、彼が出ていくのを見送るしかできなかった。  あれからどうしたんだろう、ソウスケ。大丈夫だと言っていたけど、すごく苦しそうだった。
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