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待てども待てども彼の姿はあれ以降見ることは出来ず、私はヤキモキした気持ちで入院生活を送っていた。
一度家族が私の着替えを取りに行くためにアパートを訪れた。もしソウスケが部屋で待っていて親と鉢合わせたらとんでもない事態に陥るかもしれないと慌てたが、両親は特に何も言わなかった。部屋にはソウスケがいなかったようだ。
そうなれば、やっぱりあの祠にいるのだろうか。
退院を待ち侘びて早くあの祠へ行きたかった。多くの人たちの命を助け、結局は私も救われたのだ。ちゃんと会ってお礼がしたかった。人ではない彼と連絡を取る方法なんて何もなく、もどかしい気持ちでいっぱいだった。
私の入院生活は二週間に及んだ。退院したあやめや、春奈が見舞いにきてくれ、たくさんの見舞品をくれたのは素直に嬉しく思う。春奈の話を聞くに、やはりソウスケとは一度も会っていないとのことだった。
そしてようやく退院の運びとなり、私は両親たちとともに病院を出た後、すぐさまあの祠へ向かった。
「沙希もしばらく実家でゆっくりすればいいのに」
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