悪しきもの

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 呆れて言う母の声に愛想笑いをする。車に乗って揺られながら、私は後部座席に座っていた。車にはかなり恐怖心があったが、病院からさすがに徒歩では帰れる距離でなかったのだ。  公共交通機関を使うくらいなら、車の方がまだいい。 「まあ、それもいいんだけどさ。ほら、お見舞いにきてくれた友達にも改めてお礼言いに行きたくて」 「ああ、あの子たちね。よく来てくれたわねほんと」 「うん、お見舞い品も色々もらっちゃったしさ。落ち着いたらまた実家にゆっくりしに行くから。仕事ももうしばらく休みだし」 「もうあんたの不運に母さんも父さんもハラハラよ……仕事やめて帰ってきてほしいわ」   「ニートなんてやだよー」 「お祓いも効果ないのねえ、やだわほんと……今度霊能力者とかに相談しようかしら……」  ぶつぶつと言う母に笑う。それ、絶対詐欺にあうやつ。  車の窓から、見慣れた道が見えてくる。私はあっと窓ガラスに注目した。 「あ、お、お父さん、もう大丈夫だから、おろして!」 「え?」 「アパートの前は道狭いから、ここでいい!」
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