悪しきもの

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 きっと彼の力はゼロになっているのだと思う。側にいて、抱きついて、キスだってしてやろうと思った。それくらい私は感謝している。  何度も私たちを助けてくれた彼には恩義しかない。家から追い出したことも、結局まだしっかり謝れてないのに。 「ソウスケ、ねえ?」  ひんやりと冷たい祠に呼びかける。「相変わらず騒がしいな」、とかなんとか言って背後から彼がくるのを待ち侘びた。  それでも、何度当たりを見渡してもソウスケは現れなかった。少しの風が吹くこともなく、その場は無音が流れている。  長い間待ち続けるが、一向にあの聞き慣れた声は聞こえてこない。 「ソウスケ? ……ソウスケ?」  何度も何度も呼びかけた。でも、何も反応はない。 「……ソウスケ……?」  自分の声が震えてくるのを自覚した。きっとソウスケはここにいるもんだと思っていた。私を待っていてくれるんだって。どうして、いないの?  もしかして、他にすごい陽の気を持った人を見つけてそっちに行ったんだろうか? どこかで居候してる?
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