悪しきもの

30/44
前へ
/193ページ
次へ
 そう考えても、ありえないと確信していた。さやの生まれ変わりの春奈のところすら行かなかったのに、今更私に黙ってどこかに行っちゃうなんて考えられない。  口は悪いけど根は優しい人だ。いなくなったら私が心配することくらい彼はわかってるはずだもの、どっか行くなら行くで必ず話してくれる。  そこまで考えて心臓が冷える。  まさか 「…………力、使い果たしたの……?」  消えない、って言ったくせに?  反射的にその祠に抱きついた。はたから見れば頭のおかしい女だろうけど、そんなことを気にしている暇はない。こうして私の力が彼に映るかどうかもわからないが、これしか出来ることがない。  バクバクと心臓が鳴る。まさか、ソウスケ、私を助けるために力を使い果たしたの? 「ど、どうなったの、ソウスケ??」  肌からひんやりとした感覚が伝わるのみだった。思えば、もし力を使い果たして消えちゃったらどうなるかって聞いてなかった。この祠に再び長く眠るのだろうか、まさか存在自体消滅するわけじゃないよね?だって神様が力を使い果たしたら消滅しちゃうなんて、そんな馬鹿なことあるわけないよ。  ……そうだよね?
/193ページ

最初のコメントを投稿しよう!

767人が本棚に入れています
本棚に追加