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その時ふと、背後の空気が変わったことに気がついた。
「それは無駄なことです」
同時に聞こえてきた声に振り返る。その瞬間、周りの時間がピタリと止まったような感覚に包まれた。
木々や木の葉が揺れることもなく、擦れる音すら響かない。無音の世界に放り込まれたようだった。触れていた祠の冷たさも触っている感覚も感じないような、不思議な空気感。
目の前に一人の男性が立っていた。それはそれは綺麗な人だった。
ソウスケとはまた違った、中性的で儚げな人だ。年は二十代くらいに見えるが、佇まいが只者でないことを表している。
真っ白な肌に、真っ白な長い髪をしていた。アルビノ、っていうんだっけ。細く美しい髪は背中まで伸びている。そんな変わった髪型すら、彼にはとても似合っていた。
背筋はしゃんとのび、これまた真っ白な着物を身に纏っていた。あまりに白ばかりに包まれている彼は、今にも消えてしまいそうな感覚に陥る。
私を色素の薄い瞳でじっと眺め、僅かに口角を上げていた。
「……あの?」
ようやく声が出る。あまりに現実離れした美しさとオーラに圧倒されていたのだ。
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