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「すいません、隣いいですか?」
これが彼、坂東輝都との出会いでした。四月の中頃だったと思います。日にちをはっきりと覚えていないのは不意の出来事だったから。私が「はい」とだけ答えると彼は隣に座りました。午前の授業開始のギリギリで到着し、急いでいたのか彼は肩で息をしていました。
「……何度もすいません。何か書くもの余っていますか?焦って来たので色々忘れちゃって」
シャーペンを一本、彼に貸しました。予備に何本か持っていたので。
「ありがとうございます!あ、俺、坂東輝都って言います。一年生です。今日借りてても良いですか?ちゃんと次に会った時返すんで」
「私も一年です。翠多葉留美です。返せるときで良いですよ」
「助かります!」
彼の第一印象は「無害」でしょうか。良い意味で普通。焦っていたと言う割に顔に何か付いていたりしていなかったし、服装もきちんとしていました。身の回りの事にはそれなりに気を使っているのかな、という感じ。ハンカチを取り出して汗を丁寧に拭いていましたし。顔はもの凄く整っている訳では無かったのですが、下品でもなく隣に居ても不快感が無い、と言えば分かって頂けるでしょうか。声はよく響いて良いなと思いました。人を安心させる丁度いい低さで、滑舌もハッキリしていて。
その次の週。同じ授業の前です。
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