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「翠多さん、おはよう。これありがとう。ホント助かったわ」
そう言って彼は私に借りてたシャーペンを返してくれました。それから坂東君とは少しずつ話をする様になりました。とはいっても些細な事ですが。
でも一つ記憶に残る出来事がありました。私が彼のしている腕時計を褒めた時です。初めて会った時から気づいてはいたのですが、最初からがつがつ聞きすぎるのも何だかな、と思ったのでタイミングを見計らっていました。彼が普段持っている物や服装からその時計が明らかに浮いていたので「気になったから褒めてみた」と言う方が、もしかしたら正しいのかもしれません。
「これね、親父が高校生の俺に買ってくれたんだよ。入学祝いって。こんな高いのに、高校生の俺にだよ?やっぱり高価なもの貰うとテンション上がるよね」
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