第一章・―布団―

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 洗濯物もちゃんと乾いているわねぇ。  まだ晴れているみたいだし、少しだけ日向ぼっこでもしていようかしら。  時折リビングから、呑気な笑い声が聞こえてくる。  ……頼んでも無理かしらねぇ。お隣の布団はちゃんと毎日干すのに、どうしてわが家の自分の分には腰が重くなるのかしら。  お隣の奥さん、誉めたんでしょ。だったらこっちでも自分でやりなさいよ。  ……つくづく謎だわ。  小鳥が枝で休んで可愛らしい声を響かせて、少しは心が休まる気がするわね。  自然の力って、本当に凄いわよね。  あら、ソファに根でも這ったのかしら。  動かないわねぇ。私が長時間リビングからいなくなっても気にならないのかしら。  ……。  まだ笑い声が聞こえてくるわ。コメディドラマや漫才のチャンネルに設定しているのかしら。  洗濯物を取り入れて、家に入ってリビングの床板に座り、丁寧に畳んでいく。  意外とこの作業、好きなのよねぇ。きちんとすれば服にしわも入りにくいし、何より箪笥の中が綺麗に見えるわ。
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