第一章・―布団―

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「……そう言えば。答え聞いてないけど。布団、今日は干さないのかよ?」  ……まだ言ってる、この人。いい加減しつこいわねぇ。確かに今日はお天気良いけど、同時に花粉も沢山飛んでいる日だって知らないのかしら。  幸い私はまだ花粉症ではないけれど、貴方にはそのきらいがあるわよね? なのに、何? その油断しきった態度と言葉は。  私、夜中に貴方のくしゃみで起きるとか、眠れないとかは絶対に嫌よ?  避けたい出来事だし、そうする方法もあるのだから実行して当然だと思うのだけれど、貴方には違うのかしら? 「なぁ。干さないの?」  答えないでいると、苛立った様子の夫が、再度問いかけてくる。  だったら自分でやりなさいよ。  本当に愚図ね、こいつは。 「えぇ。ごめんなさい。今日は干さないの」  聞いている暇があるなら二回くらいは干せてるわよ? 洗濯物を畳む手は止めずに答えるけれど、相変わらず夫は動かない。  それどころかチャンネルをリモコンで変えまくって、より面白そうな番組を探すばかりだ。
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