第一章・―布団―

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 意気揚々と寝室に戻ったところで、隣の家から何やら女性の悲鳴があがる。  ……あらあら。煩いわねぇ。ご近所迷惑を考えないのかしら。あの女、毎日これみよがしに布団を干しやがって、知っているのよ。  その理由。  あの女、私から夫を奪いやがって。毎日毎日、毎日毎日毎日毎日これ見よがしに布団を干して。そんなに私に、あのゴミから愛されているアピールをしたかったのかしら。  別に良いわよ。要らないから。私を愛さない人間なんて、ゴミでしょ、ゴミ。  どうして分からないのかしら。皆馬鹿よねぇ。  あ、布団……。ぺちゃんこになってるわ。  ふふふ。  毎日甲斐甲斐しくお世話をした甲斐があったわよねぇ。あんなゴミの言うままになって、布団を日光になんて晒したら、私の可愛い子供達が死んじゃうんだから。  折角貴方のために、毎日愛して、育て上げて、ごはんをあげて、これだけの数を増やしてあげたのだから、殺すなんて可哀想よ。  本当に残酷なやつね。  人でなしね。  ゴミだわ。ゴミ。  それにしても。あぁ、悲鳴が煩いわねぇ。  本当に、煩わしいったらありゃしない。
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