怖い話

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勢いで会員登録したものの、連絡をする勇気が出ない。 言いたい事だけ言って中川が帰った後も、お昼ご飯を食べて映画を二本見終わった後も、時間はいくらでもあった。 深く考えずに気軽にメッセージを送ればいい。それなのに、何度も何度もタイトルを見ては画面を閉じる作業を繰り返していた。 この人は明確な理由がある人なんだろうか。 だとしたら、私の理由にならないような曖昧なモノは求めていないのかもしれない。 反対に、理由なんてない人かもしれない。週の真ん中でダルイなくらいの感覚だとしたら共感してもらえると思えない。 「よしっ!」 大きい声を出して両頬をパチパチと叩くと、覚悟を決めてパソコンの前に座るった。 顔も素性もわからない相手にこれ以上ウジウジ悩んでいても仕方ない。私がどんなに弱気な事を書いたところで、見かけ倒しだと思われる心配だってない。 人の弱みを握って利用とする詐欺師だって可能性もないわけじゃない。 まずは当たり障りの無い挨拶だけ送ってみよう。話しはそれからだ。 『初めまして。私も水曜日を怖がっている人間です。もし良かったらお話し聞かせて頂けませんか』 エムという名前のその人に勇気を出してメッセージを送り、ベッドに入るギリギリまで待った。 だけど、返事は来なかった。 ――あぁ、どうして水曜日に送っちゃったんだろう。どうせなら明日まで待てば良かったのに。 眠ろうとしても後悔が押し寄せて、なかなか寝付けなかった。
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