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『現実から逃げてるだけですよね。病院に行けば良いんでしょうけどね』
水曜日が怖くなった数々の偶然の重なりと大きくなった嫌なイメージを、できるだけ伝わるように箇条書きにしてエムさんに一つずつ送った。それが文章でやり取りする最大の利点だと思ったからだ。
彼はその度に「成程」とか「これは嫌ですね」といった可もなく不可もないコメントをくれたけれど、そんな事かと呆れられているようで、ついわかりきっている事を自虐的に言ってしまった。
病院に行ってカウンセリングを受ければ不安要素は取り除かれるだろうし、勝手に悪いイメージに捕らわれる事も無くなるかもしれない。
わかっていても、踏み出せない。
『そんな単純なものじゃないのでしょう。僕はお話を聞いてアオさんが現実から逃げているなんて思いませんでしたよ。やり方として正しいのかわからないですけど、自分なりの戦い方で水曜日と向き合っているじゃないですか』
メッセージを知らせるピコンという小さな音が、味方を得てレベルアップした音のように思えた。
『ありがとうございます』
『いえ。他人に何故?って思われるものを怖がるのは僕も同じですから。水曜日が怖い、なんて今まで誰にも言えなかったんです』
『エムさんもそうなんですね。水曜日なんて毎週くるのに、じゃあ今までどうやって生きてきたの?って否定されるんじゃないかって。あ、でも成り行きで話した同僚には否定されませんでしたけど。エムさんに連絡をしたのも、その同僚に勧められたからなんです』
『素敵な方が身近にいて良かったですね』
『はい。彼女にエムさんの投稿を見せられた時イメージが沸いたんです』
『イメージ?どんなイメージですか?』
『ドアがゆっくり開く……みたいな。それで、自分で感じていた以上に現状を変えたい、水曜から抜け出したいって思っているんだなって実感したんです。あ、ゴメンなさい。一方的に。エムさんがどんな思いで書き込んだかも知らないのに』
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