38人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
ポカンとしている渚ちゃんと、また食事を始めた中川の間で、圧を掛けられ押しつぶされているような気分になって息苦しい。
「や……やだなぁ。休みが合わなくて友達と遊べない辛さは私達の方が長く知ってるじゃん」
「そうだけど、私は休みの日まで職場の先輩に会いたいと思わなかったもん」
「だからって友達いないは極端すぎるし失礼でしょ。中川だって休みに私と会う事あるんだから同じじゃん」
「私と大菅は同期だから良いの」
「どういう理屈よ。それを言うなら渚ちゃんは同期が営業しかいないから、そことも休みあわないのよ」
――何故、私がこんなに慌てなきゃいけない。
そう思いつつ中川を諫めたけれど、本人は全く気にしていない。
それどころか、じゃあもっと年近い子誘えばいいのにとブツブツ言っている。
「あはは。葵さん、私、気にしないから大丈夫ですよぉ。驚きましたけど」
渚ちゃんはいつもの可愛らしい笑顔を私に向けた後、中川に視線を移した。
「中川さん。私、沢山じゃないけれど友達いますから心配しないで下さい。映画は葵さんと一緒に行きたいから誘ったんです。お休みの日に先輩と会うのって私は全然嫌じゃないし、葵さんだけじゃなくて他の皆さんとも遊んでみたいって思ってますよ。良かったら中川さんとも」
渚ちゃんはおっとりとした優しい口調でそう言ったけれど、その言葉も中川に向ける目も、とてつもなく挑戦的に感じた。
――もしかしたら渚ちゃんに対するイメージが間違っているのは、私の方かもしれないな。
シンと静まり返ったテーブルで頬張った大好きな鶏の唐揚げは、パサついた口の中を潤す程ジューシーでイメージしていた通り美味しいはずなのに、少しも味がしなかった。
最初のコメントを投稿しよう!