怖い話

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ピンポーン、ピンポンピンポンピンポーン。 しつこいインターホンの音で目を覚まし、まだ半分眠っている重たい身体を引きずってモニターを覗くと、カメラから顔を背けている中川がいた。 「何、こんな朝早くに。わざわざ家まで」 「おはよー。ってかもう昼近いから。まだ寝てたの?ちょっといい?」 「えー、寝起きなのに。チョット待ってて」 中川の恋人が私と同じ地域に住んでいるから休日に近くにいてもおかしくはないけれど、こんな風に訪ねてくる事はまず無い。 何かあったかと心配になりササッと部屋を片付けて中川を招き入れた。 「お邪魔しまーす。急にゴメンね。どうしても大菅に見てもらいたいものがあってさ」 「どうせ明日会うのにそんなに急ぐ事?」 「いいじゃん。近くにいたし早く知らせたかったの。これ見て……あ、大菅パソコン持ってたか。それ使わせて」 「え?別に良いけど」 「さんきゅー」 わけがわからないまま机の上に出しっぱなしのノートパソコンを起動させると、何やら楽しそうな中川に席を空け渡した。事情はサッパリわからないけれど、嫌なことがあったわけじゃなさそうだ。 「ねぇ、何飲む?コーヒーか紅茶かりんごジュースか炭酸水」 飲み物を取りにキッチンに行こうとした私のTシャツの裾を、中川が思い切り引っ張って呼び戻す。 「そんなの良いから。そこで待ってて。あっ、これこれ」 服が伸びると怒る私を気にもせず、何かを見つけた中川がニンマリと笑った。 「何をそんなに見せたいわけ?」 「彼の会社で新しく交流サイトを立ち上げたんだけどさ。そこに大菅にピッタリの人材が現れたんだよ」 「交流サイトって……あぁ、婚活?もしかして医者?この間あんな話したからって、私、別に医者と付き合いたいってわけじゃないよ」 「ちーがーうよ。そもそも婚活サイトじゃないし。月によって変わる一つのお題に対して、それぞれが好きな形で好きなようにプレゼンするの。面接とか日常のコミュニケーション能力を高める為にね」 「あぁ、なんかテレビで見た事あるような気がする」 だからと言ってソレが自分に必要だとは一ミリも思わない。何を勧めてくる気か警戒して、無意識で眉をしかめた私を中川が笑った。 「怯えるなって。今月のお題が『怖い話』なんだけど、この人見てよ」 促されて見たそのページにはタイトルのみが表示されていたけれど、私の気を引くのに充分な威力があった。 『僕は水曜日が怖い。同じ人いませんか』
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