龍鳴寺般若堂

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「甕とな?何の甕だ?」 「さあ?」 「何が入っておる?」 「雨水が淵まで溜まっておりまする」  それを聞いて和尚さんは、わははと笑いました。そして柄杓(ひしゃく)(おけ)を持ってまいりますと、小僧に甕の中の水を汲み出させます。天井の穴から小僧が顔を出して、 「すっかり(から)になりました」と言うと、和尚さんはお堂の真ん中に立って、パンッと手を叩きます。  うぉ〜〜〜ん、と龍が鳴きました。  小僧が梯子を降りてきて、 「(から)の甕が音を響かせていたのでございますか」 「そのようだて」 「あの甕には何が入っていたので?お酒でしょうか?」 「何を申す。これは禅寺ぞ、酒なんぞあるものか!あれは、般若湯(はんにゃとう)だ」 「般若湯?」
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