水曜日

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スキップしそうな様子で事業部へ出勤して、休みの間の仕事の話を聞き、簡単なミーティングをしてから、大樹は営業部へと足を運んだ。 エレベーターが開いて降りる時、下に行くエレベーターに乗り込もうと立っている北川俊也と目があった。 「お疲れ様。外か?」 話したく無さそうな俊也に声を掛ける。 「ああ。新規開拓しているとこでな。新しいとこを見つけないといつまでも課長止まりだよ。お前はやっとだな、おめでとう。」 「あぁ、ありがとう。」 「興味無さそうにしながらちゃんと課長になったじゃないか、しかも事業部。事業部の部長から統括に上がる人間は多いらしいな。やられたよ。」 肩をポンと軽く叩くと俊也はエレベーターに乗り込んだ。 「北川、俺は課長止まりでも良いと思ってる。結果を出して上に行くのも大事だけど一番大事なのは取引先とか同じ部署の仲間とか家族とか…大事に守れる事じゃないか?」 振り向いて大樹が言うと、ドアが閉まる。 細い隙間から、 「お前のそういうとこ嫌いだわ。」 と、声が聞こえた。 同期なのに入社した時からやたらと張り合われた。 仲良く酒でも飲んで仕事の話をしたいのに、相談をすれば案件を取られたり、相談に乗って欲しいと言われて喜んで乗れば、発案を持っていかれたりした。 嫌われてるのかなと、二年も経つ頃には自覚して側に行かない様になっていた。 (だけど水葵が好きになった人なんだ。幸せになって欲しいんだけどな。) そんな事を考えながら営業部の窓から中を覗くと、長山恵理子が真剣な顔つきでパソコンを打っていた。 ドアを開けて挨拶を邪魔にならない小さな声でしながら、長山の横のたまたま不在の机の持ち主に変わり、椅子を引いて座らせてもらう。 恵理子は隣の人が戻ったのだという認識で見る事もなく、淡々とノートパソコンに向き合っていた。 キーボードと目線の間に茶封筒を差し出しすと、顔を横に向けた。 「川島さん、なにこれ?………川瀬、さん!どうされたんですか?」 隣にいるのが大樹だと分かると驚いた顔を見せる。 「偶然にも「川」だけ合ってたな。なんか顔色良くないな?飯食ったか?」 「放っておいて頂けますか?それよりこれはなんですか?」 「自分が置いて帰ったんだろ?中里梛さんから、返しておいてくれって。」 中里梛と聞いて体がピクンと動いて、茶封筒を恵理子は受け取った。
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