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こちらも実際に会ってみればとてもいい方で、優しい態度、物腰、断るつもりですと言う私にとても辛そうな顔をされて、
「僅かでもチャンスがあるならまた会ってくれませんか?」
と言われたのです。
高校は女子校で、今の職場は事務で周りは女性ばかりです。
既婚者の社長と専務、直属の上司は男性ですが父と年齢は然程変わりません。
男性に免疫のない私はかっこいいスーツの似合う歳上の男性にポーっとなってしまい、夢心地のまま了承の返事をしていました。
こうしてお付き合いを始めて半年後にはスピード結婚をしていたのです。
19歳でお見合いをし20歳を迎える前に結婚をしました。
私が家を出て半年後、父も再婚をしました。
どちらの結婚式にも兄は帰って来てくれました。
大変だったと思います。
こうして実家には父と新しい母が住み、私は新しい母が来る前に結婚をして家を出ました。
ーー「将来、自分の子供が産まれたら、小さくていいからお庭で一緒にお花を植えるのが夢なの。」
映画を見た帰り、それが外国の恋愛映画だった事もあってそんな話をしました。
小さな頃、母と二人で庭に花を植えました。
母は植物に詳しい人で、台所にハーブやネギなど小さな鉢植えが置いてあって、夏には庭でプチトマトなどを育てていました。
同じ様な事を私も夢見ていたのです。
結婚から一年、夫が家を購入しました。
小さいけど庭のある家で、突然連れて行かれて今月末には引っ越すよと言われ思わず泣いたほど嬉しかった。
家が、と言うよりは、何気ないひと言を覚えていて通勤時間も掛かるのに、ローンも大変になるのに私の為にと感謝を伝えました。
結婚と同時に仕事を辞めて専業主婦。
夫の為に居心地の良い家にしなければと、2年目のスタートを切りました。
それから夫の帰宅が遅くなる事が増えて、暫くは『残業、ごめんな?』と言ってくれていたのに、口数が減り朝の会話もなくなり、帰宅後の会話もなくなり、数ヶ月後には私が何かを言うと、
「文句か?それ…。」
「俺はちゃんと働いて養ってるだろ?遅く帰った位で文句言うのか?」
そんな風に怒る事が増えて、話も聞いてくれなくなりました。
最初は耳を疑う様な小さな声で、徐々に注意する様な口調になり、とうとう大きな声に変わってしまい、私は小さく身体を震わせて謝るだけで精一杯でした。
元々男性との接点がなく、怒鳴られた事などない私には大きな声を出される事だけでも怖くて何も言えなくなっていきました。
どんどん息を潜めて暮らす様になっていました。
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