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大樹は休みだからと駅まで送ってくれて、ホームまで一緒に来た。
新幹線が入って来るとぎゅっと抱きしめられて、水葵は赤くなり周りを気にしたが、そんな水葵を見て大樹は笑い、耳元で優しく話し掛ける。
「大丈夫だよ。離れるカップルに見えるだけ…。」
「それが恥ずかしいと思うの。」
腕の中でポツリと答えると、笑顔で身体をゆっくりと離した。
「毎週は無理でも出来るだけ行くから!メールは毎日する。電話は梛さんみたいに切られると怖いから時々にする!水葵は好きな時にメールしていいし、電話していいから。出れない時は後で折り返すからね。」
思わず吹き出してから、水葵も微笑みを向けた。
「梛兄さんと大樹さんは違うでしょ?忙しい時は出れない事もあると思うし、メールの返信も遅い時もあると思うけど、絶対返事するから。嬉しいから…大樹さんのメールも電話も。あ!梛兄さんには内緒ね?梛兄さんも嬉しいのだけど、反応がいちいち大袈裟と言うか…返信を待たれているのが想像出来るとね……返信がないとまたすぐメールが来るし、それは止めて欲しいのよね。」
ふぅ、とため息を吐く水葵を見て笑いながら梛のフォローをした。
「可愛い妹が心配なんだから、時々は電話しろよ?俺にもね。」
「そうする。大樹さんにはモーニングコール、約束したしね。」
にっこりと言われて、水葵の手を握り置いていた荷物を手にして、停まっていた新幹線に誘導しながら大樹はボソッと囁いた。
「大樹さん、じゃなくて大樹、な?体には気を付けて。調子が悪い時は連絡して。それも約束。」
新幹線に水葵を乗せて、荷物を渡すと水葵が泣きそうな顔をする。
「大樹、も…無理しないで体には……会いたくなったら来てもいい?」
「いつでも大歓迎。式場、探しておくからね。」
「うん、ごめんね、任せて。」
「こっちで探すんだから近い俺が探すのは当たり前の事だよ。二人の結婚式なんだから。仕事辞めさせてごめんな?残り半年、精一杯頑張れ。」
「ありがとう。頑張って来る。大樹?」
「ん?」
発車の音がホームに響いた瞬間、涙目の水葵が少し体をドアの外に出して、不意に唇の感触がした。
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