日曜日の訪問

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「男子禁制」と聞いていた寮に案内されて、事前に話してあるからと、玄関で立ったまま二人の先輩にお土産を手渡してちゃんと挨拶をしてから、促されるまま靴を脱いで上がり、ペコペコと頭を下げて階段を上り水葵の部屋に入った。 挨拶をする為に休日にスーツを着て訪問したのだから、先ずは二人に悪い印象を与える事なく挨拶を終え、水葵の部屋に入り、大樹は安堵のため息を吐いていた。 「今日は特別許してくれるって。変な事禁止ね?」 「変な事って何?」 冷蔵庫を開けてグラスに氷を入れている水葵に、にやにやと意地悪を言うと、ピンクに染めた頬を膨らませて、お盆に氷の入ったグラスを載せて持って来た。 「そういう意地悪言う人だった?罰です、ジュース入れて。私はコーラで。」 水葵に手渡された荷物からコーラを出して、自分の分もグラスに注ぐ。 他愛のない話をしてから、調べてプリントアウトしたガーデンウェディングの候補を見せると、目を輝かせて見ていた。 「半年は先なんだね?ここすごいよ、2年先まで予約埋まってるって。帰って来てすぐにね、社長には話をしたの。今年いっぱいで退職出来ますかって。」 「えっ?もう?」 驚いて声が大きくなった。 「駄目だった?早い方がいいと思ったし、新しい人を決めるにしても私もそうだったけど直ぐには戦力にはならないでしょ?ちゃんと引き継いで辞めるのは責任だと思ったの。」 「…うん。」 頑張っていた、それは下で紹介された先輩達の水葵への態度を見ても分かる。 ちゃんとした信用や信頼がなければ、初めて見る男性を男子禁制の寮に入れない筈で、水葵が可愛がられて仕事をしっかりしていた事は挨拶だけでよく分かった。 「本当に今年いっぱいで辞めて大丈夫?無理してない?」 改めて今の生活を見て、充実して楽しそうだと思うと心配になった。 「無理はしてない。八百新もね、本当は辞めたくなかった。だけどお世話になって家賃も取ってくれないし、一人暮らしでもないし自立とも言えないからどうしても一度、ちゃんと一人で暮らしてみたかったの。」 今も一人暮らしとは言えないけどと、照れた様に笑い、水葵は続けた。 「大樹さんが異動まで考えてくれて嬉しかったし、でもそこまでする事ないと思う。結婚しますって話したら社長も直ぐに辞めないでいいのって訊き返されたの。有り難いけど大丈夫?って。遅過ぎた春とか浮気とか?遠距離恋愛の心配をして下さってた。みんな暖かくて優しくて…本当に幸せ。」 嬉しそうに微笑む水葵にそうか、と答えて抱きしめる。 座ったまま無理に身体を引き寄せると、水葵の正座が崩れて体の重みが大樹の全身に掛かった。
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