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この重みを背負って行くと気を引き締める。
「水葵がそれでいいと決めたなら、俺はただありがとうと言う。仕事を辞めた事を水葵が後悔しない様に幸せになる様に努力する。二人で幸せになろう。」
「はい!……本当に異動願い、出さないでよ?」
チロっと上を見て疑いの目で言われて、うん、と目を泳がせた。
「あ!出そうとしてた!!」
体を起こして言われて、慌てて弁解をする。
「違う!異動願いじゃなくて、出張とか長いのが有ればいつでも行きますよって事業部の部長に自分を推しただけ!だって会えるだろ?」
仕方ないなぁ、と優しい笑顔を向けてくれた。
大樹は今や梛の事を言えない程に、水葵にメロメロでどんな事でも聞いてしまいそうな程だった。
優子が作った鯖味噌を出してお昼ご飯にすると、水葵は目を輝かせて、
「食べ終えたら優子さんにメールするね。」
とバクバク食べていた。
その様子をじーっと見ながら、水葵は太らないなぁと呟いて叩かれていた。
その日から毎週は無理だったが、月に二度、大樹は神戸に行き、寮にお邪魔したのはこの最初の日だけで、大樹が泊まるホテルで待ち合わせをしてデートを重ねた。
ホテルの部屋では結婚式の打ち合わせをして、2か月後には会場が決まり、7月になると打ち合わせの為、水葵が土曜の夜に梛の家に泊まり、日曜日に打ち合わせをしてその夜に帰る事が増えた。
ちょっとした言い合いはいつもの事で、穏やかに式の準備を勧めていた。
言い合いと言っても、打ち合わせで大樹が水葵が良いなら何でもいいと言った事に対して、水葵が言葉を返しただけだった。
ーー「何でもいいって……どうでも言いみたいに聞こえるよね。二人の式なのに私一人で挙げるみたい。」
俯いてボソッと言われて、大樹も担当者も慌てた。
その時はすぐに機嫌を直してくれて、大樹も真剣に意見を言い始めたが、後から梛に報告を兼ねて相談をすると、言われてしまった。
ーー「それは大樹さんが悪いよ。前の式は殆ど水葵の意見もなくて俊也さんも担当者お薦めのパックでいいみたいな感じだったんだ。日がないからって理由だったと聞いてるけど、納得行くまで話し合って決めたかったんじゃないかな。ドレスだって自分がいいと思う物を隣に立つ人が適当に答えたら悲しいでしょ?」
確かに…と深く反省をした。
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