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子・元親
20XX年、日本では『オンライン家族』という言葉が社会問題として取り上げられるようになった。
『オンライン家族』とは家族一人一人がバラバラに住み、リモートやメッセージアプリでコミュニケーションを取る家族のことを指した。
父親と母親は仕事のためにそれぞれの会社内の居住スペースに住み、家には子供と家事育児専用ロボットだけ。
日本の中心部はどこを見てもその様な家族ばかりだった。
これに対し、「子は親の温もりを知れず、親は子の重さを知らず」という意見が上がった。要は、親にも子にも良くない影響が出るのではないかという話だ。
しかし、オンライン家族が普通の家族へと戻る事例は少なかった。
それは、家族との時間を増やせば仕事の時間が減り、キャリアや給与が下がると考える人が多かったからだ。
中間家も例外ではない。
『中間』という表札の掛けられたあるマンションの一室。そこには9才の少年が1人。
「学校どうだ?」
テレビ画面の右半分に映る男が、少年に話しかける。その男は少年の父親、中間長幸だ。
「……変わんないよ。普通。」
眉ひとつ動かさずに少年は答える。
「元親、『普通』じゃわかんないわよ。」
次はテレビ画面の左半分に映っている女が言った。
少年、元親の母親である中間愛だ。
「普通は普通!それだけなら切るよ!」
元親はそこで両親との通信を切ってしまった。
部屋の中には静寂が響きわたった。
その静寂を破ったのは、家事育児専用ロボット『マイボーイ』だ。
ウィィィンという機械特有の音を出しながら、元親の傍へ寄る。
「モトチカ、何か必要なものはありますか?」
感情のない音声が、膝を抱えて俯いている元親に問いかける。
「……マイボーイ、あっためて。」
元親は顔を伏せたまま呟くように言った。
「了解。室温を上げます。」
マイボーイは室温調整を行うが、それに対して元親は、そうじゃないんだよ……と声にもならない声で呟いた。
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