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深夜、元親の寝た後、長幸と愛は酒を飲みながら話をしていた。
「……元親は、今の生活が気に入らないみたいだな……。」
長幸が一人言のように呟いた。
その言葉に愛が頷くと、長幸はまたポツリポツリと呟きを落とした。
「……俺は何か、間違ってたのか?頭が良ければ、それだけ将来の選択肢が増える……そう思ってあの学校を選んだ。マイボーイによる完璧な家事も、元親にとって良いものをと思ってだった。……これは間違ってたのか……?」
頭を抱える長幸に、愛は小さく息を吐いてから声をかけた。
「きっと子どもの事を思ってすることに、間違いも正解もないのよ。間違っていたとしたらそれは、何か穴があったのよ。……小学校を選んだのは、幼かった元親では選べないものを代わりに選んで、それがあの子に合わなかった、それだけなのよ。マイボーイの事は、私も家事が苦手だから賛成した。けれど……」
愛はため息をひとつ吐いて続ける。
「完璧な家事があるのだから、と思って私たちは家を離れて働いていた。それが穴だったのね。これは子どもの為ではなくて、私たちの都合だった。……結果、リモートで顔を合わせて会った気になって、自分の子どものアレルギーすら忘れて……」
愛の言葉は尻すぼみになり、消えてしまう。
沈黙になってしまった中、長幸は酒をゴクリと飲みこんだ。
「……変わることを、あの子は許してくれるんだよな……。」
元親はここまで、歪むことなく育ち、意見を真っ直ぐに伝えてきていた。
それは長幸と愛にとってありがたく、幸せなことだった。
子どもの為だと思いながら、いつの間にか自分達の都合にすりかわっていた。
しっかりと視線を合わせて話してみれば、元親は現状に不満があるということもわかった。
それらをどう捉えるか、長幸と愛の答えは、この1週間が終わるまでに決まったのだった。
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