父・長幸

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父・長幸

元親の父、長幸の考える幸せな家庭とは『金銭面での不自由のない家庭』だった。 そのためなら会社に住み込み状態で働くこともいとわなかった。 息子である元親には、良い学校に通わせ、家事育児専用ロボットによる徹底した世話。 それが元親の幸せであると、勝手に信じこんでいた。 「中間、お前に書いてもらいたい記事がある。」 ある時、長幸宛てに社長から依頼があった。 社長から直々に一社員への仕事の依頼など、今までなかったことなので、長幸は驚いた。 驚く長幸をよそに、社長は説明を始めた。 「うちの会社から出版している『週刊 Life Star(ライフスター)』にオンライン家族の記事を掲載したい。社会問題となっているんだ、オンライン家族反対派として書いてもらいたい。だが、他人の意見を聞いて表面だけの記事を掲載しても意味がない。」 社長はそこでカレンダーに目をやり、続ける。 「お前の所は重度のオンライン家族だが、来週から子供は春休みに入るよな?……1週間でいい、家族で田舎で生活してみてくれないか?」 社長の依頼は、中間家全員で1週間田舎で生活してみて、それを記事としてまとめてくれとのことだった。 その間の会社への出社は不要。会議にはリモートで参加しろとの事。 長幸は急な依頼に悩むものの、社長からとあっては断れない。 妻や息子にも相談してみます、と返事をした。 長幸は社長のもとを後にしてから、ふと思った。 社長の所もオンライン家族だったはずだが、と。 しかしあまり深く考えることはしなかった。 それよりも、社長の依頼をどうこなせば自分の評価が上がるかということを考えていた。
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