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母・愛
元親の母親である愛は、家事育児が苦手であった。
自分で作った料理は、美味しいのかどうか自分ではわからなかったし、掃除をしてみても、どこかに汚れが残っていることがよくあった。
それを自覚していた愛は、下手な家事育児で元親を育てるよりも、ロボットによる完璧な家事育児を元親に与えることを決めた。
それにより経費は嵩むが、その分自分が働けば問題はない。
元親は完璧な家事育児を受けられて幸せなはずだ、と信じこんでいた。
そんな愛のもとに、夫である長幸から連絡が入った。
来週あたり、元親の春休みに合わせて1週間休みが取れないかと。
どうやらオンライン家族反対についての記事を書くという仕事があり、そのための実体験をしたいそうだ。
そんな急な話……と愛は呆れながらも、上司に相談してみると、なんと快く許可してくれた。
なんでも、上司はオンライン家族反対派なのだそうだ。
愛にはあまり理解出来なかった。
完璧な家事育児のためのロボットのローン代、セキュリティのしっかりしたマンションの家賃、良い教育のための学費……。他にもまだお金のかかるものはある。
それらのために会社に入り浸ってでも仕事をする必要があるのに、と愛は内心首を捻った。
とにもかくにも、来週の末より1週間、有給休暇の許可が出た。
こんなにも早く許可が降りるのは、社会においてオンライン家族反対派が強くなってきているからだろうか。
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