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中間家の3人
日は過ぎて、ある週末のお昼過ぎ、中間家は田舎の一軒家に居た。
長幸の会社の社長から、この一軒家で1週間家族で好きに過ごして良い、と言われている。
田舎とはいったものの、田園風景というわけではなく、田舎の中でも都市部といったところだ。
スマホの電波も届くうえに、Wi-Fiもこの家のものが使える。
中間家にとって特に変わりは無かった。
家族で過ごすという一点を除いて。
「……久しぶりね、3人揃うの。」
愛の、呟きにも思える言葉に、元親と長幸が頷く。
普段リモートでコミュニケーションを取っている時とは違って、妙な緊張感が漂う。
緊張感のせいか、どうにも会話が続かない。
3人はぎこちない空気の中、とりあえずこの家の部屋や周りを確認してみる。
リビングにダイニングキッチン、もちろん風呂やトイレもある。2階には寝室や子供部屋があり、家具家電付きだ。
家の外には庭がある。広いが、何もない殺風景な庭だった。
家の周囲を見終わると、また会話の続かないぎこちない空気が漂う。
何とも言えないこの空気を変えたいと、愛が手を叩いて言った。
「そろそろオヤツの時間だし、オヤツにしましょう。」
愛はダイニングテーブルの上に、ここに来る途中で買ったお菓子を並べていく。
「何が好きなのかわからないから、いろいろ買っちゃった。」
チョコレートやアーモンドクッキー、ポテトチップスにポッキー、お煎餅など、様々な種類のお菓子がある。
「ああ、俺も飲み物を買ってあるんだ。」
長幸も様々な種類の飲み物をテーブルに置く。
こちらもお茶やスポーツ飲料の他、オレンジジュースやリンゴジュース、乳酸菌飲料など何種類もある。
我が子の好みすらわからないことを、長幸と愛は何とも思っていなかった。
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