中間家の3人

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3人でお菓子を摘まむも、会話は無かった。 無音と言うのも何だと思い、付けたテレビの音声だけが響いている。 長幸はこの微妙な雰囲気を、ただ不思議に思っていた。 上司や部下、同僚や友人と居る時とは全く違う。仕方無しに共に居るのとも違う。ただ気が合うから共に居るのとも違う。 長幸の中では、『家族』が共に居ることがどういうことなのか、わかっていない。 愛はこの空気を『重い』と感じていた。 直接会ったら聞きたかったことがあったような気がしたのだが、いざとなると思い出せない。 自身の子供の頃に憧れた『家族』とは、このようなものだったか、それすらも思い出せない。 元親はこの状況に、様々な感情が沸き上がるのを感じていた。 『家族』の揃っていることへの安心感、会話の無い空間への居心地の悪さ、また元の暮らしに戻る時が来るという不安感……。 求めている温かさ、それが近くに見えて遠いものであることを悲しんでいた。 この家族に衝撃が起こったのは、この直後だった。 「元親、お前どうした!?」 長幸が元親の顔を見て驚嘆の声を上げる。 元親の唇が腫れ上がっていたのだ。 「え?……ああ。」 元親は腫れた唇に気付くと、その不快感に顔をしかめた。
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