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「おれ、アーモンドのアレルギーだったの忘れてた。」
元親の言葉に、愛は一瞬ポカンとするが、次の瞬間には立ち上がり、元親のもとへ駆け寄った。
あたふたとしながらも、元親に水を飲ませようとしたり、近くの病院を調べる長幸と愛を、元親は止める。
「別に大丈夫だよ!……唇腫れてるだけ。そのうち戻るから。」
元親はムスッとした顔でそう言った。唇の腫れがその表情を余計に不機嫌そうに見せている。
そんな元親を、愛は泣きそうな顔で見ていた。
元親のアレルギーについては、長幸と愛のスマホに通知が来ていた。
しかしそれは何年も前の事であり、普段元親の食べる物はマイボーイが徹底的に管理しているので、アーモンドのアレルギーの事など、元親本人も忘れてしまっていた。
「……ごめんね。ごめんね、元親……。」
愛は、アーモンドクッキーを買った自分を責めた。
ここで初めて、我が子の好みはおろか、アレルギーすら忘れている自分に落胆した。
「……別に大丈夫だって……。」
泣きそうな母親から、元親は目を逸らした。
自分が原因で人に泣かれるのは、誰であろうと気まずいものだ。
元親は大丈夫だと言うのに、愛の表情は晴れない。
元親はそんな愛の顔をチラリと横目で見ると、腫れた唇を少し掻きながら言った。
「おれ大丈夫だけどさ……一個お願い聞いてよ。」
元親のお願いは、愛の苦手とする、ある事だった。
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