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愛は涙を流していた。
「……お母さん、大丈夫?」
元親の問いかけに、愛はコクコクと頷く。
その手元には切りかけの玉ねぎと包丁。
元親の『おれも手伝うから、お母さんの手料理を食べたい』というお願いを叶えるためである。
しかし愛は料理を含む家事が苦手だ。
それを元親も理解しており、家族皆で協力して作ることになったのだ。
あの後、元親の腫れも小一時間ほどで治まり、夕食のための買い物をした。
料理道具などは、この家のものを借りても良いようだったので、食材のみを購入した。
「はい、お父さんはお米研いで。」
普段マイボーイの料理の様子を眺めている元親の指示で、長幸が米を炊いたり、サラダを作ったりする。
愛はレシピとにらめっこをしながらハンバーグを作る。
料理に対してなんともたどたどしい3人だったが、作り始めて一時間を過ぎた頃、ようやく完成した。
ハンバーグは割れていたし、サラダの野菜は大きさが揃っていなかったが、3人とも笑いあって食べた。
この家に来て、一番ぬくもりに包まれた瞬間だった。
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