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次の日、元親は意を決したように、今まで閉じ込めていた思いを打ち明けた。
「おれ、本当は昨日みたいに皆で暮らしたい。ただ1人で生かされるみたいに暮らすのは嫌だ……。」
元親のその思いに、愛は賛成の意を示した。
昨日の出来事は、愛にとっても転機となったのだ。
料理が苦手で、昨日作ったものも決して綺麗な出来ではなかった。しかしここには、それを責める者も馬鹿にする者もいない。
『家族』というものが少しだけわかったのだ。
対して長幸は、手放しで賛成とは言わなかった。
仕事や金銭面などを考えてのことだが、それだけではなかった。
長幸にとっても、昨日の夕食はあたたかな一時だったが、今までの生活を変えるほどのものではなかった。
元親は、すぐにどうにかなる話ではないとは理解していた。
しかし、何だかんだと渋る父親に、すこし悲しくなった。
「……少し、考えてほしい、かな……。」
元親はそう言うと、唇を噛んだ。
元親にとって、マイボーイが家事とか色々をしてくれることはありがたい。
しかし、そこにはあたたかさはない。
1人で食事をとり、1人でテレビを見て、誰にも挨拶をすることなく眠る。
そんな暮らしを子どもがすることに、父親は何も思っていないのだ、と元親はさらに悲しくなる。
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