第1話・オッサンがキャバクラ嬢へ変身

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第1話・オッサンがキャバクラ嬢へ変身

                1 大江戸線・東新宿駅近くの、午後五時頃のファミリー・レストラン 『ロイヤル』。(サラリーマンや若いカップルなどで、騒がしい) 165センチの主人公・麻生光希は、ここでウエイターのアルバイトをしていた。 入り口からニューハーフ(といっても綺麗系ではなく、いわゆるオカマクラブの化け物たち三人)が来店した。 三人は、デブやガリガリや筋肉マンといった風貌。化粧もドギツい。 (麻生は奇しくも、未来の自分に似た趣向の三人に出くわしてしまった) 麻生  「もっと綺麗に変身できないのかよ?」 そして三人は、黒服のマネージャー・三谷(みたに・40歳、175センチ)を見るなり興奮した。 デブ  「あらっ、イケメンじゃな~い」 と、三谷の腕を組んだ。 ガリガリ「このオジちゃんっぽい子も、よく見ると可愛い顔だよ~ん」 と、麻生の頬にキス。「ブッッチュー❢❢」 筋肉  「あら、この子、お坊ちゃんなの? オッサンなの?」 と、麻生を見て言った。 三人は馬鹿にしてるようだけど、いたって普通のつもり。 麻生は、三人の図星の言葉にキョトンとした。 その頬っぺたにはグロテスクな口紅が。 時間の経過。 その後、入り口から柄の悪いヤクザ風の三人が、スーツ姿で入ってきた。 (場違いな感じを強調) 入口付近に立っていた麻生と可愛いウエイトレス・工藤万美(19歳、160センチ)は、笑顔でヤクザたちを迎えた。 万美  「いらっしゃいませぇ~」 麻生  「いらっしゃいませ」 (麻生の、頬っぺたの口紅は消してある) 三谷が、一番奥の窓側に案内した。 三谷は戻ってくるなり、渋い表情で万美に話しかけた。 三谷  「万美ちゃん、彼らが君を呼んでくれって……」 万美  「あたしが?」 三谷  「そう、指名するからって」     「万美ちゃんじゃないと、注文しないらしい」 すると万美が、注文を取りに行こうとした。 麻生が後ろから万美の肩を持ち、 麻生  「ちょっと待って……」     「僕が行くから」 万美  「えっ?」 麻生  「あんな怖い人たちに、君を接客させるわけにはいかない」 麻生  「マネージャー、彼らは昼間から酒を頼む可能性もあるから、      アルコールに詳しい僕が適任です」 と三谷に言うと、ヤクザな男たちに向かった。 その後ろ姿を見た三谷は心配げに、 三谷  「あいつ、大丈夫かよ……?」 ヤクザ三人を前にして、麻生は笑顔を引きつらせ、 麻生  「御注文よろしいでしょうか?」 A   「なんや、お前は呼んどらへんど」 麻生  「申し訳ありません。彼女はまだ新人なので、      お客様たちには充分な接客は出来かねると思われますので……」 と、笑顔で応じた。(多少、引きつっているが) A   「ふ~ん。じゃぁ、俺はホット」(背もたれにふんぞり返って) B   「ワシもじゃ、熱いの頼むわ」(上目使いで睨む) C   「以下、同文だけど……」 上座の奥のC、とぼけたように、 C   「あん……君は――???」 と中腰になって麻生に迫り、サングラスのふちを持って調節しながら麻生に見入った。 C   「お嬢ちゃんかい? 坊ちゃんかい?」 A   「お前、オカマか?」 と、麻生の尻を撫でた。 馬鹿にされた麻生は真剣な表情であるが、その瞳には大粒の涙が溢れ出した。 麻生  「それでは、コーヒーを三つお持ちいたします」     「ありがとう御座います」 そして涙が頬を伝わったまま、その席を後にした。 ヤクザたちは、大げさに泣いて笑った。 それを見る二人は、やや焦りながら、 三谷  「麻生は30歳だけど、とっちゃん坊やみたいだからな」 万美  「しかも中性的というか……」 三谷  「確かに」
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