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 この学園において、生徒会と風紀委員会の権力というものは絶大だ。  それらに所属しているだけでたいていのやらかしは目をつむってもらえるし、彼らだけが持つ特権も多い。  生徒会役員ならそれぞれ親衛隊と呼ばれる学内のファンクラブのようなものをもつことが公式に認められるし、その親衛隊をどのように扱ってもいい。学内のごく一部を除いたほぼすべての設備や規則へのアクセスが常時可能で、学校自体の運営にも口を出せる。例外はあるが学校に関わることについて、彼らの望みはほとんどすぐに叶えられる。学内の行事や季節のイベントを主催するのも主に彼らだ。自然学内での立場も強くなるし、親衛隊でない生徒や教師も彼らには基本的に逆らえない。役員の立場が強いということに加え、生徒会に選ばれるのは名家の子息が多いというところもある。  生徒会は学校という小さな社会の中枢にあたる。学園の王様達という認識で構わない。  風紀委員なら申請なしの魔法の行使、問題行為を働いた生徒の捕縛が許可され、生徒会役員とは別の学内設備の使用が可能になる。また外的要因で生徒に危険が及んだ場合、彼らの安全確保および要因の拿捕も業務である。入学、卒業、転入、転出などに関する儀を執り行うのも彼らだ。  こちらは学園の警察、あるいは役所といえる。  他にも食堂でタダでご飯が食べられたりだとか自販機でタダでジュースが買えたりだとかいろいろと特権はあるが、まあだいたいはこんなものだ。そのため生徒会や風紀委員会所属の生徒はもてはやされたり恐れられたりする。  主にもてはやされるのは生徒会、恐れられるのは風紀委員会の担当だけどな!  学生に自治権を与えるこのシステムは、聖峰学園の前身となった国軍士官養成学校の名残らしい。  聖峰学園は代々聖峰一族が経営をつとめる私立の男子校で、小学校から大学院までが付属している。  聖峰一族の先祖はここ日ノ本がまだ戦争をしていた時代、国軍の偉いさんだったらしく、終戦と同時に軍をやめて学校経営に乗り出したらしい。その際に取り壊し予定だった士官学校のいくつかを買い取ったそうで、それを補修したりなんなりで誤魔化して今日まで使ってきたのが聖峰学園になる。そこそこ歴史の長い学校なのだ。  士官学校の名残がどうこうというのは俺もあまり詳しくは知らないのだが、どうやら一時期学生たちの治安が悪かったらしく、盗みや暴行の事件だとか暴動紛いのことだとか、まあそういう不祥事にあたるようなことが続いたらしい。  その鎮圧のため、紆余曲折を経て生徒の中から「鎮圧本部」と「実動隊」が選出され、それが今日の生徒会と風紀委員会の基礎となったという。  時間とともに生徒会の仕事は鎮圧から学園の運営にかかわることへと変遷していったわけだが、要するに今も昔も方針や方策を考えるのは生徒会であり、実際に問題生徒をしばき倒すのは風紀委員であるため、生徒会スゲーー!風紀委員会コエーー!となっているわけだ。  いや、別にちやほやされないのは構わないのだ。というかされたくはない。どうせ男子校である。生徒会の奴らじゃあるまいし、男にキャーキャー言われてもどうしようもない。前世も今世も割とぼっち気質なこともあって、知らん男子生徒に黄色い悲鳴とともに追いかけられるよりは放っておいてもらえた方が全然ありがたい。怖いし。  ただ、怖がられる方に関しては…。  今まではどうってことはなかったんだが、記憶を取り戻してからは、うん。  廊下に足を踏み出した瞬間、割れる人込みがつらい。だってみんな気配殺して目逸らしてるんだよ。顔に縦線見えるし。心なしか顔色悪いしなんか震えてる人もいるし!とにかくめちゃくちゃ居心地が悪い。  ほら今小さい声でたすけてって聞こえた!!  そんな怖くないよ!いやごめん嘘!今は気絶した当馬を縛って担いでるからちょっと怖いかも!ごめん泣かないでくれ頼む!  逆によくこんな中で今まで平常心でいられたな!?えらいぞ俺!頑張って生きてる!
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