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二
「……また来たの?」
玄関のドアを開けるなり眉間に皺を寄せ、沙希は言った。
「仕方ないじゃない、パパに頼まれたんだもん」
すぐに踵を返してダイニングに戻っていく沙希の後を、急いで中に入り鍵を閉め、靴を脱いで追いかける。
恭吾さんは医師だ。
これまで夜勤の日は沙希を一人にするしかなく、心配でもあったし、心細い思いをさせているのも辛かった。
結婚を決めたことを機に、夜勤の日だけ面倒を見てほしいと頼まれ、私もその方がお互いに早く馴染めるだろうと考えたため、喜んで引き受けた。
でも、沙希の心はそんな思惑に全くついてこない。
話しかけても、返ってくるのは短い相づちだけ。質問でもしようものなら無言になって目も合わせない。
最初に来た時はご飯を作らせてもくれなかった。冷凍庫を開けて、通販で取り寄せた冷凍のお弁当を見せながら、「これがあるから要らない」と言う沙希を見て、なんだか切ない気持ちになった。
二度目に来た時に無理やり料理をして食卓に並べたら、不機嫌そうに口を尖らせながらも食べてくれたので、その後はずっと作り続けている。
でも、「おいしい?」と聞いても「別に」としか返ってこないので、沙希が喜んでいるのかどうかはわからないままだ。
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