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三
「沙希はちゃんといい子にしてる?」
平日に休みを合わせてデートをしている時に、恭吾さんが聞いてきた。
「いい子の定義にもよるかな」
そう返したところで優しい笑いが漏れる私達は、きっと幸せなのだろう。
公園のベンチの周りは落ち葉に埋め尽くされていた。
もう十一月だというのに日差しは暖かく、私達はそこに座って目の前の池をぼーっと眺めながら、静かな時間を過ごしていた。
サラサラと無風の空間を落ちてきた枯れ葉が、ふわりと頭に着地する。
こんな時間を共有してくれる恭吾さんが、私は大好きだ。
「もう一年通ってるのに、未だに私のことが嫌いみたい。相変わらずニコリともしてくれないし」
「おかしいなぁ、俺といる時はそんな子じゃないんだけど」
「それだけ私に敵意を持ってるってことよ」
このまま懐いてもらえなかったら、私は恭吾さんと結婚できないんだろうか。
最近はそんな考えが頭をよぎることがある。
「俺もどう思ってるのか聞き出そうとするんだけどね、百合ちゃんの名前を出すと途端に不機嫌になるから、なかなか聞けなくて」
「ほらね、やっぱり。私はただの家政婦なんだもん」
「家政婦なんかじゃないよ」
恭吾さんは笑いながら、私の頭を肩に引き寄せる。
私は甘えて目を閉じた。
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