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私は沙希の言葉を信じることができなかった。
きっと私を騙すための嘘なのだろう、そう思った。
とはいえ、たとえ嘘だとしても、それほどに沙希は私を受け入れる気が無いということになる。どちらにしても、恭吾さんとの未来は絶望的に思えた。
でも、他人だというのが万一本当だとしたら、それを知られて不利なのは沙希の方じゃないだろうか。
これまで私は、彼の娘だからこそ、沙希の気持ちを大事に考えてきた。
けれど、全くつながりのない他人同士なら、私と恭吾さんは何も抱える必要のない、普通の恋人同士ということになる。
しかるべき所に沙希を渡せば、すぐにでも結婚できてしまうのだ。
沙希はちゃんと気づいているのだろうか? 自分が捨てられるかもしれないということに――。
いや、そもそもなぜ他人同士が二人で暮らしているのか、その疑問の方が大きくて、とてもじゃないけど現実味がない。
とにかく、恭吾さんに確かめるしかない。沙希の狂言なのか、真実なのか、真実だとしたら私が費やした二年はなんだったのか――。
ちゃんと答えを聞かない限り、今の私には判断しようがない。
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