まちぼうけ

2/3
前へ
/3ページ
次へ
ふと見ると、ほっと安堵の表情を浮かべた若い男が、私のすぐ目の前を駆けていった。 男はばつが悪そうに笑いながら、同世代くらいの女のもとへ駆け寄った。すると、嬉しそうな顔をした女が、彼に寄り添う。 ふたりが仲良く肩を並べ、私の前を通りすぎた。 仕合わせな横顔に、 仕合わせな横顔が重なる。 なんとまあ、呆れたことだ。 女はさっきまで、身体を揺らして足踏みをして、私と同様にイライラしていた。 その感情も、今ではすっかり忘れているのだ。 そうしておそらく、次回もまた私と同様、性懲りもなく 同じことを 繰り返す。 小さくなった後ろ姿を見届けると、もう一度だけ時計を見、私は小さく息をついて、その場を離れた。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加