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息苦しい
息をゆっくりと吐く。なるべく吐く量を少なく。意識的に。僅かずつに調整する。大きく息を吸い込まないために吐きすぎないように注意する。息している気分になるためにパクパク口を開ける。
フゥー
それから、小さく息を吸い込む。だめだ、口を開けたい。頭がパニックになりかける。でも、開けたら酷い苦しみが待っている。脳裏に刻みつけられたさっきの苦しみ。嫌だ、もう、死にたい。
浅くしか呼吸ができない。さっき失敗した。ひどく苦しかった。怖い。あの苦しさは怖い。本当に。
気管支のあたりに鈍い感触が溜まっていて気持ち悪い。そこを起点に体中に広がる不快感。震えるような、鉄のスプーンを歯で噛み締めたときのような気持ち悪さが全身に広がる。でもだめだ、パニックになっちゃ。それほどあの苦しさは、怖い。
僕の呼吸の機能は大分低下している。
体感的には全身をさわれないビニール袋かなにかに覆われているような。口の前に空間が殆どないから、息が吸えない。
大きく息を吸おうとしても空気がうまく吸えないんだ。思ったのの半分も吸えない。一息吸うごとに抜けていく空気のほうが多くて。
そして大きく息を吸おうと肺を開けると、口を閉じる時により多くの空気が抜ける。悪循環。口を開けちゃ駄目だ。それはさっき学んだ。1つずつ、学ぶ。口は小さくあけてゆっくり空気を移動させる。鼻はうまく吸えなかった時にパニックになるから、なるべく調節が可能な口で呼吸する。なるべく苦しくない方法を考える。でも、苦しい。息が、できない。
さっきはもういっそ死んでしまいたいと思って、肺いっぱい空気を吸い込もうとして大きく口を開けて空気を吸い込んだ。きっと全部の肺の中の空気を出して、吸い込む空気がなくなると死ねると思ったんだ。
でもその後は最悪だった。地獄の苦しみだった。息ができない、酸素がない。でも、死ぬほど枯渇しているわけじゃない。わずかの空気をすすろうと藻掻く。
心臓は空気を求めてパクパクするほどに心拍数はあがり、必要な空気が増える、なのに口の中に空気が入らなくて苦しくて苦しくて。聞こえない声で叫んで、気絶したかったのに気絶できない。酷い頭痛がして、気がついたら必死で息を浅く抑えていた。でも物凄く苦しくて。でもパニックになりそうな頭を必死で押さえつけて、息苦しさと気持ち悪さに耐えて、なんとか小康状態を保っている。吐く息と一緒に声を出さずに叫ぶ。喉と気管を震わせる。小さな抵抗。叫ぶことに意識を向けて、苦しさから逃れようとする試み。苦しい。息が、できない。油断すると本当に叫びそうになる。でもそれは嫌だ。怖い。あの苦しさは二度と味わいたくない。でも、苦しい、今も、すごく。
これ、いつまで続くんだ。僕はいつ死ねるの? 絶望感。
苦しい。誰か、殺して。お願い、助けて。
-付言
夢で死にたいとおもったのはこれかな。
息できないのまじくるしい。声を出さずに空気揺らさずに気持ちだけで絶叫するのは案外気をそらすのに有効。
リアルでも喘息い時とか抗アレルギー剤ききすぎた時とか夜中に死ぬかと思ったこと何回かあるけど、息吸える量が少ないってのは本当に苦しくて嫌。溺れて死ぬのは苦しいって聞くけど、息吸える量が極端に減って延々生きるくらいなら死にたいと思う、多分。
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