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水銀の湖
すごく広い空間で浮いている。
浮いているといっても水面スレスレで、浮いてるのも多分約1センチくらいだ、
まわりは遠くまで白いモヤがかかっていて、どのくらい先まで見えているのかわからない。
冷たい湿った風が水面から膝下の間をゆっくりと止まらずに、川の流れのように一定の強さとスピードでザリザリと流れているから、思ったよりは広いのだろう。狭いなら滞る気がする。
水面は水銀のようで、鈍い銀色に光っている。
遠くにすごく長い影を持つ男がいた。だがこの空間は全体的にもやっているから、どのくらい遠くにいるのかはよくわからない。その影は水銀の上を流れるように長く伸びている。
俺は足元を見ると、約1センチ浮いている分だけの小さな影が、うっすらと直下にできていた。俺が自分の影を確認して目を上げると、その男が目の前にいた。
それは確かに男だと感じる。20代くらいだろうか。だがその男は黒い三角とか四角が集まって構成されていて、平面だった。
男は軽く会釈する。
俺も軽く会釈した。
そうすると俺の足が見えた。
立体だな。なんで俺は立体なんだろう?
なんか変だな、と思った。
ー付言
このあとなんかあったような気がするけど覚えてないや。
なんとなく軽く耳鳴りがするような感じで、底冷えするみたいに少し寒かったような。
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