転機

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 ゲームショウは大盛況のうちに幕を閉じたものの、その代償は大きかった。  わたしは4日間、おへそを出し続けたためか風邪をひいて熱を出してしまい、翌日は自宅アパートで寝込んでいた。連休の残りは棒に振ることになりそうだ。  実家の近くで一人暮らしをしているため、普段ならば助けを求めればすぐに母親が来てくれるはずなのだけれど、連休中は夫婦で旅行に行くと言っていたはずだ。  兄は、事情を話したら会社に文句を言いそうだから、内緒にしている。  たしか兄も「連休中はあれこれ忙しいから相手してやれなくてごめんな」とか言っていたっけ。  別に相手などしてもらわんでもいい!と思っていたけれど、病気で弱り切っていると寂しくなってしまう。  そこへ、電話の着信音が響いた。  わたしに電話してくる相手なんて、兄ぐらいなものだ。  だからよく確認しないまま飛びついて「お兄ちゃん?」と言ってしまった。  数秒の沈黙ののちに聞こえた声は、兄のものではなかった。 『田辺さん?桜庭です』 「え!ああ、ごめんなさい。ゲームショウお疲れさまでした」  まだ微熱が続いているせいで、ただでさえ回転の遅い頭がさらに回らない。  わたしも最終的にゲームショウのプロジェクトチームの一員だったから、わたしの携帯番号を桜庭課長が知っているのはいいとして、休日に何の用だろうか。 『無理を言ってあんなコスプレをさせてしまったお詫びとお礼を個人的にしたいんだけど…』  そこまで聞いたときに、ゲホゲホッと咳が出てしまった。 『田辺さん?……もしかして体調悪いのか?』 「ええっと…おへそがびっくりしちゃったみたいで、風邪ひいただけですから…ゲホッ…ご心配いりませんニャ」  しまった、桜庭課長を相手にすると語尾が4日間使い続けた「メル語」になってしまう。 「個人的なお礼も不要ですニャ」 『……本当に大丈夫か?』 「大丈夫ですニャ!」 『いや、大丈夫じゃないだろ』
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