転機

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 押し切られる形で桜庭課長に風邪薬と食料を持ってきてもらうことになってしまった。  魔王様をパシリにするとは、わたしも出世したわねっ!  今度、静香に自慢してやろう。  部屋を汚くしていると、いつも突然やって来る兄に叱られるから、水回りを中心に清潔な状態は保つようにしているし、服を床に脱ぎっぱなしとかもしないようにしている。  でも、休日になったら片付けようと思っていた読みかけの漫画が置いてあったり中途半端にあと少しだけ中身が残っているペットボトルが置いてあったりと、なんとなく雑然としているのが気になって、慌てて片付けた。  玄関先でお願いしたものだけを受け取ったら、中には入ってもらわずにお引き取り願うつもりだし、向こうだってそのつもりだろうとは思うけど念のためだ。  少し動いたらクラクラしてしまって、ベッドに倒れるようにして寝転んでウトウトしていると、ピンポンとチャイムの音が響いた。  起き上がって出ようとして、自分がパジャマを着ていることに気づき、羽織るものを…と思ったけれど、こういうときに限って見当たらない。  仕方なくそのまま玄関ドアの前まで行ってドアスコープで桜庭課長であることを確認すると、ドア越しに荷物をそこへ置くようお願いした。  残念ながらこのアパートには「インターホン」という小洒落たものはない。 「いや、開けてくれないか」 「無理無理無理!わたし今パジャマなんで!」 「ふっ、何をいまさら。昨日まであんなエロい恰好で俺にくっついていたくせに」 「ヘンタイっ!」 「ここで大声出していると、本当に変態かストーカーのように思われるから、頼む」 「うっ…」  たしかにその通りだ。  桜庭課長がここでお巡りさんに職質でもされたら、かえって面倒なことになる。  渋々ドアを開けると、軽い身のこなしで有無を言わさず中に入って来た桜庭課長は「お邪魔します」と律儀に挨拶をしてから部屋へ上がって来た。  
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