転機

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 いろんなものを買い込んできてくれたようで、両手にパンパンに物が詰まったビニール袋を提げている。  中身はイオン飲料と水と麦茶、のど越しのいいゼリーやプリン、パンやレトルトのおかゆ、即席スープ、それに市販の風邪薬とお湯で溶くショウガ湯、おでこに貼るひんやりシートという、完璧なラインナップだった。  生活感がないというか、浮世離れしている雰囲気の人だから、こういう買い物を頼んでも『これ1冊でビジネスマナーがわかる!』とかいう本でも買ってきそうだと思っていたのだけれど、そんなことはなかった。  自分のアパートでふたりっきりというシチュエーションの気まずさから、そんなことを冗談めかして言ってみたら 「俺のことを何だと思っているんだ」  と冷ややかに返されてしまった。  魔王様に決まってるでしょう!  とは言わないほうがよさそうだな。
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