転機

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 桜庭課長が買ってきてくれたゼリーを食べ、薬を飲んだら体が随分とラクになって、眠たくなってきた。  落ち着いたところでよく見ると、今日の桜庭課長はもちろんいつものスーツ姿ではなく、ダークグレーのVネックニットにベージュのスリムパンツという、シンプルなカジュアルスタイルだった。  かっこいい人は、何を着ても似合っちゃうんだよねー。  ジーエム伯爵のコスプレだって、本当にかっこよかった。  仕事に夢中で自分のスマホで全く撮影しなかったのが悔やまれる。  一枚ぐらい一緒に写真撮らせてもらえばよかったな。  そんなことを考えていたら、桜庭課長の手がこちらに伸びてきた。  長い指がわたしの前髪をかき分けて、額に大きな手のひらが当てられる。  桜庭課長の手はひんやりしていて気持ちいい。 「まだ少し熱ありそうだな。横になって休め」  おとなしくそれに従ってベッドに寝転ぶと、額にひんやりシートを貼ってくれた。  意外と甲斐甲斐しい。 「ありがとうございます。もうひとりで大丈夫です。鍵はテーブルの上に置いてあるので、かけたら新聞受けのところから中に入れておいてください」  心配そうに眉尻を下げてわたしを覗き込む顔を見て、こんな表情もする人だったんだなーと思いつつ、もう大丈夫だから帰ってくれていいですよと安心してもらうために「にへ~」と笑ってみせた。  課長のほどよい冷たさの手が頬に当てられて、気持ちいいなと思っているうちに眠りについたわたしだった。
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