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ゲームショウが開催されていた4日間ずっと、ひなたの肩が寒そうだと思っていたし、最後に「お疲れ様」と言って手のひらでポンと触れたその肩がとても冷たくて気になっていた。
ようやく休みとなったその日、ひなたに電話であらためて労いを言おうかとか、
体調を崩していいないか確認しようかとか、
もしも連休後半に空いている日があるなら個人的にお礼がしたいから食事にでも行かないかと誘おうかとか、
いやそれはやりすぎかとか、
女の子をデートに誘うのってどう切り出すのかもう忘れたなとか…、
久しぶりに帰った実家のリビングでスマホを握りしめ、悶々としながら午前中を過ごした。
「お母さーん?なんかお兄ちゃんがすごく険しい顔してて、リビングが怖いんですけどぉ」
「あら、お兄ちゃんが怖い顔してるのはいつものことじゃない」
「そうだったっけ、あははーっ」
母と妹のアホっぽい会話が聞こえてきて、仕方なく2階の自分の部屋へ行った。
誰も2階に上がってくる気配がないのを確かめてから、ようやく覚悟を決めて電話をかけてみた。
ひなたは案の定、風邪をひいて熱が出てしまったらしく、語尾に「ニャ!」をつける「メル語」のままでおかしなことになっていた。
後で振り返ると、その「おかしな」状態だったからこそ、すんなり住所を教えてくれたし、家の中にも入れてくれたのだろうと思う。
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