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ひなたの住むアパートは、偶然にも実家と同じ沿線で、2つ先の駅にあった。
行く途中にあるスーパーとドラッグストアで必要なものを買って見舞いに行くと、パジャマだからドアを開けられないと渋るひなたを言いくるめて中に入る。
ひなたのアパートは、玄関を入ってすぐに小さなキッチンと冷蔵庫があり、その奥にベッド、ローテーブル、テレビ、棚が置かれた畳の部屋があった。
中に入れろと言ったのは自分だが、いかにも熱がありそうなとろんとした瞳とさくらんぼ柄のパジャマがかわいすぎて目の毒だったために、ゼリーを食べ終えたひなたに「もう横になって休め」とすすめた。
ひなたの頬や額は熱くて、4日間無理をさせたことが悔やまれた。
もう帰ってくれていいと言われたが、こんな病人を置いて帰れるはずもない。
かといって、何もせずにひなたの寝顔を見ていたら理性を保つ自信もない。
病人相手に何を考えているんだと自嘲しつつ、ひなたが完全に寝付いたところで一旦ノートパソコンを取りに実家に戻った。
どうせ実家でもすることがないだろうと思って、仕事をいくつか持って帰っていたのだ。
急な仕事が入ったからこれで、と母に告げると、どうせそうなるだろうと思ってたと笑われた。
「これ、持って帰りなさい。ちゃんと栄養のあるもの食べないとダメよ」
総菜をいくつか持たされた。
そうだ、これもひなたの家に持っていこう。
「あれ?お兄ちゃん、もう帰るの?てか、何しに来たの?」
おまえらが、たまには帰ってこいって呼んだんだろーが!
妹は、ひなたと年齢がさほどかわらないはずだが、どうしてこんなにもかわいくないんだろうか。
そんなことを考えながら、ひなたのアパートへと戻ったのだった。
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