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「ひなた、ただいま」
言ってみて、ひとりで恥ずかしくなって見悶えた。
「サンダーボルトをおみまいですニャー」
ひなたは眠ったままムニャムニャと、そんなセリフで出迎えてくれた。
夢の中でまだメルになりきっているらしい。
どうやら楽しい夢のようで、へらへら笑っているのが救いだろうか。
その夢の中でも、ジーエム伯爵と一緒にいるのか?と聞きたくなる。
集中して仕事をしていると、時間や空間を忘れる。
いま何時で、自分がどこで作業しているのか…。
「メルメルパ~ンチ!」
いや、メルにそんな技はなかったはずだが?
現実に引き戻されて、ひなたの部屋にいることを思い出し、額に貼ったシートを取り換えて頬と耳の後ろをそっと触ってみると、熱は引いてきている様子だった。
窓の外を見るともう真っ暗になっていて、時計を確認すると20時を過ぎたところだ。
よかった、もしも夜にさらに熱が上がるようだったら夜間救急に連れて行った方がいいんじゃないかと心配していたが、大丈夫そうだ。
「ちょっとコップと箸借りるな?」
「トイレ借りるな?」
寝言に返事をしてはいけない、起こすわけではないのに眠っている人に話しかけてはいけないとよく言うが、一応断りをいれたほうがいいだろうと思って返事を期待せずに小声で話しかけるたびに、ひなたはムニャムニャと返事をしてくれた。
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