4/7
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
「大丈夫だった?」 「え? 何が? 予想外の味だったけど、ダイジョブだよ?」  だって、ザクロは食べてたじゃん?  そう言ったら、ザクロは非常に困ったという顔で言った。 「今、お前が食ったの、ハチの子」 「ハチ……の子? む、虫?」 「……そう」  ザクロは掌に袋の中身をコロコロと振り出して見せた。プリッとした白っぽい芋虫。 「熱湯でゆでて、乾燥させたやつ」 「は……ふ、ふうん……」  頭の中が真っ白けになった。  それで、ザクロは自分の前で食事をしたがらなかったんだ?  なるほどー。へー……、そーかー。 「ダイジョブ……だったよ? ダイジョブだったけどさ……」  ちょっと、涙目になってしまった。 「こういうの、こころのジュンビがほしーなー」 「あ、……やっぱり?」 「『やっぱり?』じゃーないだろーが!」  だまし討ちされたことに腹が立つのが半分。  また一つ、秘密を打ち明けてもらえた嬉しさが半分。  ザクロは、これがばれたら嫌われると思っていたらしい。ハチの子に栄養があることは知識として知ってるし、肉が食べられないザクロには貴重な栄養源であることも解る。そんなことで、嫌いになるわけないのに。  これがきっかけで、ザクロは普段何を食べているのか、教えてもらえるようになった。川エビや沢蟹も平気だということが分かった。なんだ、案外と色々大丈夫なんじゃないか、と安心した。  霧の谷には夢見草は無い。そんなの、とっくに分かってた。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!