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「大丈夫だった?」
「え? 何が? 予想外の味だったけど、ダイジョブだよ?」
だって、ザクロは食べてたじゃん?
そう言ったら、ザクロは非常に困ったという顔で言った。
「今、お前が食ったの、ハチの子」
「ハチ……の子? む、虫?」
「……そう」
ザクロは掌に袋の中身をコロコロと振り出して見せた。プリッとした白っぽい芋虫。
「熱湯でゆでて、乾燥させたやつ」
「は……ふ、ふうん……」
頭の中が真っ白けになった。
それで、ザクロは自分の前で食事をしたがらなかったんだ?
なるほどー。へー……、そーかー。
「ダイジョブ……だったよ? ダイジョブだったけどさ……」
ちょっと、涙目になってしまった。
「こういうの、こころのジュンビがほしーなー」
「あ、……やっぱり?」
「『やっぱり?』じゃーないだろーが!」
だまし討ちされたことに腹が立つのが半分。
また一つ、秘密を打ち明けてもらえた嬉しさが半分。
ザクロは、これがばれたら嫌われると思っていたらしい。ハチの子に栄養があることは知識として知ってるし、肉が食べられないザクロには貴重な栄養源であることも解る。そんなことで、嫌いになるわけないのに。
これがきっかけで、ザクロは普段何を食べているのか、教えてもらえるようになった。川エビや沢蟹も平気だということが分かった。なんだ、案外と色々大丈夫なんじゃないか、と安心した。
霧の谷には夢見草は無い。そんなの、とっくに分かってた。
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